
データローミングとは、契約している通信会社が持っていないネットワークをスマホが使ってデータを送受信することで、たいてい海外にいるときに発生する。訪問先のネットワークが通信を運び、契約している通信会社がローミング料金を請求する仕組みだ。海外では自分のホームSIMのローミングはオフに、旅行用eSIMのローミングはオンにしておこう。
#データローミングの仕組み
スマホは基本的に契約している通信会社のネットワークを優先して使う。通信会社の電波が届かない場所に行くと、提携している現地のネットワークに自動的に接続する。Appleのローミングに関する説明によると、「データローミング」のスイッチが制御しているのは、契約している通信会社がカバーしていない地域でモバイルデータ通信を使えるようにすることだ。
その裏側には商業的な契約がある。訪問先のネットワークは、通信量に対して卸価格を契約先の通信会社に請求し、通信会社はそれに利益を上乗せして利用者に販売する。この何重にも重なった課金構造こそ、ローミング料金が高額になりがちな理由だ。GoogleのPixelサポート文書もはっきり書いている。データローミングに追加料金を課す通信会社もあるが、場所によってはそれが唯一のネット接続手段になることもある、と。
スイッチをオフにしていても、電話番号を使った通話やSMSの送受信は引き続き可能だ。ただしデータ通信だけは行われないため、その回線でデータローミング料金が発生することはない。
#いつオンにして、いつオフにするか
自分のホームSIMについては、海外ではオフにしておくのが基本的に安全だ。写真の自動バックアップのようなバックグラウンド通信は、現地に着いた瞬間からローミング経由で発生することがあり、通信会社によっては知らないうちに1日単位の課金プランに自動加入させられることもある。
旅行用eSIMではこの考え方が逆になる。eSIMとはGSMAが標準化した、ダウンロードしてインストールするSIMプロファイルのことで、旅行用eSIMを発行している通信会社は、渡航先に自社のネットワークを持っていないことがほとんどだ。つまりその回線は、現地の提携ネットワークにローミング契約経由で接続する仕組みになっており、技術的には常にローミング状態にある。だからデータ通信を使うには、データローミングのスイッチをオンにする必要がある。
決定的な違いは「誰が費用を負担するか」だ。卸価格の費用はあらかじめプリペイドプランの料金に組み込まれているため、その回線のローミングで予想外の請求が発生することはない。最悪でもデータ容量を使い切るだけだ。たとえば co:sim の日本旅行用eSIMなら、データ容量を使い切った時点で通信が止まるだけで、追加料金は発生しない。
デュアルSIM対応のスマホなら、両方を組み合わせるとよい。ホームSIMは通話とSMS専用にしてローミングはオフ、co:sim eSIMをデータ通信専用にしてローミングはオンにする。Appleのデュアルsim対応ガイドでも、両方の回線を同時にアクティブにできること、ただしデータ通信を運ぶのは一度に1回線だけであることが説明されている。
#確認しておきたい設定項目
iPhoneの場合:Appleの手順にあるとおり、設定 → モバイル通信 → モバイルデータ通信オプション から「データローミング」を開く。デュアルSIM対応のiPhoneでは、まず対象の回線をタップしてから設定する必要がある。ローミングは回線ごとの設定なので、「ホームSIMはオフ、旅行用回線はオン」という使い分けにぴったり合う。
Androidはブランドによってメニューの場所が異なる。Pixelの場合:Googleの手順にあるとおり、設定 → ネットワークとインターネット → SIM からSIMを選び、ローミングのオン・オフを切り替える。それ以外の端末では、設定画面で「ローミング」と検索するとよい。
iPhoneには特に注意すべき項目がひとつある。「モバイルデータ通信の切り替えを許可」だ。Appleの説明によると、この機能は「電波状況や利用可能状況」に応じて、デュアルSIMスマホが自動的にどちらの回線のデータを使うか切り替えるというものだ。旅行用eSIMの電波が一瞬途切れただけで、データ通信がホームSIM側に自動的に切り替わってしまう可能性がある。旅行中はこの設定をオフにしておこう。

#ローミング料金と他の選択肢を比較
通信会社や渡航先によって料金体系はさまざまなので、価格そのものより「仕組み」で比較するのが分かりやすい。
| 方法 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| キャリアローミング/1日パス | 短期旅行。設定不要で電話番号もそのまま | 日割り料金が積み重なる。バックグラウンド通信が従量課金の対象になりやすい |
| 現地SIMカード | 長期滞在、大容量データが必要、渡航先が1か国 | 空港での行列購入、身分証確認、ホームの電話番号が使えなくなる |
| 旅行用eSIM | ほとんどの旅行:出発前にプリペイドデータを準備できる | データ通信専用(電話番号なし)。eSIM対応でSIMロック解除済みの端末が必要 |
構造的に一番大きな違いは「前払いかどうか」だ。キャリアローミングは後払いで、料金も自分でコントロールできない。現地SIMカードと旅行用eSIMはどちらもプリペイド式なので、最悪でもデータ容量を使い切るだけで、予想外の請求書が届くことはない(しかもco:simのチャージ可能なプランなら、データがなくなっても数分でチャージできる)。
#よくある質問
#データローミングをオンにすると、いつもより多くデータを消費しますか?
いいえ。データローミングが変えるのは1MBあたりの料金と誰が請求するかであって、スマホが実際に消費するデータ量ではない。地図を開いたり写真を1枚送ったりするときに消費するデータ量は、ローミング中でも自宅にいるときでも同じだ。ローミング料金の請求が膨らんで見えるのは、1MBあたり、あるいは1日あたりの単価が高いからであって、使用量がこっそり増えているわけではない。ただし一点だけ行動面での落とし穴がある。自宅のWi-Fiから離れると、写真の自動バックアップやアプリの自動更新、動画の自動再生など、普段はWi-Fiが処理してくれる作業をモバイル通信に頼るようになる。iPhoneの「低データモード」やAndroidの「データセーバー」をオンにし、自動バックアップを一時停止しておけば、この増加は抑えられる。プリペイド式の旅行用eSIMを使う場合、こうした習慣がそのままデータ容量が何日もつかを左右する。
#データローミングをオフにしても、電話やSMSは届きますか?
たいていの場合は届く。「データローミング」のスイッチが制御するのはモバイルデータ通信だけだ。スマホは音声通話やSMSのために、訪問先のネットワークに引き続き接続できるので、電話は鳴りSMSも届く。ただしこれらのサービスには別途ローミング料金がかかる場合があるので、頼りにする前に契約している通信会社のローミング規約を確認しておこう。一方、インターネット経由のサービスは事情が違う。WhatsApp、iMessage、メールはいずれもデータ通信を使うサービスなので、データローミングがオフでWi-Fiもない状態では動かない。多くの旅行者は、このちょうど中間の状態をあえて選んでいる。普通の電話やSMSは問題なく届き、アプリのメッセージはWi-Fiに接続するか、旅行用eSIMがデータ通信を引き継ぐまで待つという使い方だ。一切課金されないという確実さがほしいなら、機内モードだけが完全な遮断手段になる。
#なぜ旅行用eSIMはデータローミングをオンにするよう求めてくるのですか?
その旅行用eSIMを発行している通信会社が、渡航先に自社のネットワークを持っていないことがほとんどだからだ。旅行用eSIMはローミング契約を通じて機能する仕組みで、その回線はローミング利用者として現地の提携ネットワークに接続する。つまり技術的には常にローミング状態にあり、その回線用のデータローミングをオンにしない限り、スマホはデータを通さない。これは設定ミスではなく正常な動作だ。co:simのプランもまさにこの仕組みで動いており、各プランページには実際に使用する現地ネットワーク名が明記されている。通常のキャリアローミングと違う点は、これがプリペイドプランで、ローミング費用があらかじめ価格に含まれているため、青天井の請求が発生しないことだ。データローミングはそのeSIM回線だけでオンにし、ホームSIMはオフのままにしておこう。設定は回線ごとに行われる。
#機内モードにすればローミング料金は完全に防げますか?
はい、完全に防げる。機内モードはモバイル通信の送受信機能そのものをオフにするため、スマホはどのネットワークにも接続できなくなる。データ、通話、SMSのいずれも送受信できないので、そもそも課金対象になるものが存在しない。Wi-Fiだけは別途オンにできるので、ホテルの回線でメッセージアプリや通話アプリを使い続けることは可能だ。デメリットは「徹底しすぎる」ことにある。機内モード中はその電話番号に誰も連絡が取れず、機内モードを解除するたびにスマホは数秒でネットワークに再接続し、その瞬間にたまっていたSMSが一気に届き、音声やSMSのローミング料金も再び発生しうる。確実さがほしいなら機内モード、精密なコントロールがほしいなら「高額なデータ回線だけ遮断しつつ、通話やSMSは受け取れる」データローミングのスイッチと、インターネットを担当する旅行用eSIMの組み合わせを使い分けるとよい。
#EUの「域内ローミングは自国と同じ扱い」とはどういう意味ですか?
契約回線がEU加盟国の通信会社のものであれば、EUのローミング規則により、他のEU加盟国でも国内料金のまま通話・SMS・データ通信を利用でき、追加のローミング料金はかからない。この制度はEEA(欧州経済領域)にも適用される。該当する契約者にとっては、ヨーロッパ域内でデータローミングをオンにしておいても通常は問題ない。ただし2点だけ注意が必要だ。通信会社は公正利用ポリシーを設けている場合があり、特に無制限プランでは国内料金でローミングできるデータ量に上限が課されることがある。またこの保護はEU/EEAの域内でのみ有効で、境界を越えると適用されなくなり、船や飛行機の衛星通信も対象外だ。ヨーロッパ以外の通信会社と契約している旅行者はこの恩恵をまったく受けられないため、co:simの30か国をカバーするヨーロッパ旅行用eSIMのような1枚で複数国をカバーするプランが定番の代替手段になっている。
データローミングは危険なものではなく、回線ごとに切り替えるスイッチにすぎない。従量課金される自分の回線ではオフに、旅行用のプリペイド回線ではオンにしよう。


